#47(記録) 「私が『民藝』から学んだこと」上野昌人 氏(書籍企画・編集・デザイン)

2018年4月20日
テーマ:「私が『民藝』から学んだこと」
ゲスト: 上野昌人 氏(書籍企画・編集・デザイン)

元々はグラフィックデザイナーですが、東京の出版社で古美術や骨董の雑誌『目の眼』の編集を8年間やっていました。2010年7月に400号記念増刊として「サヨナラ民芸。こんにちは民藝」を刊行。わからないなりに、民藝の過去、現在、未来というテーマで2人ずつの対談3本を企画したものが好評を博し、これがきっかけで民藝との関係が深くなって知らないうちにどっぷり民藝にはまっていました。民藝の「藝」と「芸」という字は、戦後、当用漢字として「芸」に統一されました。

民藝と言えば、柳宗悦です。白樺派で実は中心的な役割を果たしていたようで、雑誌「白樺」でセザンヌやゴッホ、ルノアールを初めて日本に紹介したのも彼です。

関東大震災後、柳は10年間京都に住みますが、この10年が非常に大事です。京都時代、柳は民間の人が作った木喰仏に注目しました。空いている時間は骨董市に通いつめ、貨車4台分のコレクションを買い漁ったといわれています。これが日本民藝館のベースとなっています。ただし、このうちのどれだけが柳の集めたものなのか、関係者がなく、わからない状態です。

今、「民芸」はブームで、お金になると言われています。「民芸」とつけばびっくりするほど売れて商売になります。しかし、これらは柳宗悦のいう「民藝」とは別のものです。津軽のつぎあてなど、もともと親しい人のために作っていたものが、江戸時代、数を作って商売にしていったところから、民芸、そして工芸へと変質していきました。もとは自分や家族のために作られたものであり、その中には「愛」があります。「愛」は民藝の大事なファクターです。手仕事で作ることによって自分も人も救われるという、仏教的な側面があります。柳宗悦の民藝思想の原点もここにあります。


民芸は、民衆的工芸という意味で、日用の器具で安価のもの(=大量生産、ではない)、だれでも手に入れることができ、丈夫で利用価値があるものでした。暮らしの中にある、身の回りの、特に美しいものでないもの。しかし、日本の美は道具の中にあります。例えば、箸は慣れるまでは不自由なものですが、使って慣れていくと自由な表現ができて大変便利です。道具というのはそういうもので、道具をいかにうまく使いこなすかに人間の特徴があります。外に目を向けず、身の回りを見直して、暮らしの中に当たり前にある必要なものに美を見出すことが柳の言う民藝の本質です。見立てを使うこと、既成の体制から価値観を転倒し、新しい価値観を創出しようとする点で茶の湯にも通じるものがあります。

ただ、民藝とは何かという話になったとき、おんたやきの中で1つだけ柳が直感と主観で選んだように、「柳が選んで日本民藝館にあるものだけが民藝」としか言いようのない部分があります。新しいものを取り入れたものが民藝であったはずなのに、柳が「これは民藝」といったとたんに規定されてしまいます。これでは今後劣化していくばかり。民藝の役割は終わったのではないかと僕は思います。民藝は思想として継承されていけばよいのであって、そろそろ民芸を名乗るのをやめてはどうかと。

僕自身は民藝を通じて、違いを互いに認めながら共存していくことが大事と教わりました。欲は行き過ぎるといずれ戦争に行きつきます。「人と争わなくてもいい」というのが民藝であり、本来の日本人ならではの良さであったのではないか。本を作る中でこのことを伝えていきたいと思っています。

#47(案内) 上野昌人 氏(書籍企画・編集・デザイン)「私が『民藝』から学んだこと」

2018年4月20日
テーマ「私が『民藝』から学んだこと」

「第47回 但馬コネクション」のご案内

4月は京都より、上野昌人 氏(書籍企画・編集・デザイン)をお迎えして「私が『民藝』から学んだこと」というテーマでセッションを進めて参ります。柳宗悦の「民藝」という思想が生まれて約100年が経ちました。今なお私たちの心を捉えて離さない「民藝」の魅力について、上野氏に語っていただきます。

今、「民藝」は雑誌の特集でも取り上げられることも多く、セレクトショップなどでも販売コーナーが作られてライフスタイルの一つになっています。しかしそれは本当の「民藝」の姿だといえるのでしょうか。多くの人が「民藝」について語っていますが、それゆえ「民藝」の本質的な部分が分かりにくくなっているような気もします。

「骨董」と「民藝」は違うのでしょうか。「民藝」と「民芸」の文字の違いは?
そしてそもそも「民藝」とはいったい何なのでしょうか。

上野氏からのメッセージ:
『私は究極、「人と争わない生き方」ということを「民藝」や鈴木大拙から学びました。この生きてゆくのが難しい時代に、何か少しでもお役に立てることがあればと念じています。そして
一人でも多くの方たちに柳宗悦や鈴木大拙の本を読んで戴きたいと願っています。』

一緒に学び、考え、意見交換しませんか?たくさんの方の参加をお待ちしております。

日 時: 2018年4月20日(金) 19:00~22:00 (受付開始18:30)
場 所: ドーモ・キニャーナ(豊岡市日高町江原)
ゲスト: 上野昌人 氏(書籍企画・編集・デザイン)
テーマ: 「私が『民藝』から学んだこと」
参加費: 3,000円
※ 講演後、立食交流会があります。
※ 参加申込は、info@tajimaconnection.com までメールでお知らせ下さい。
※ 参加希望の方のみご連絡ください。(不参加のご連絡は不要です)
(先着40名様) (「満席」のお知らせはe-mail、HPでお知らせします)