#61(案内)ASAYANAGI featuring AKIKO YABIKI「Jazz Night in Tajima Connection」

「第61回 但馬コネクション」のご案内

2019年12月20日
” Jazz Night in Tajima Connection “

12月は、”ASAYANAGI featuring AKIKO YABIKI”ジャズ ・ライブ演奏を聴きながら年末の夜を楽しく過ごします。

ASAYANAGIは、勝地哲平(ギター)と田中愛子(ピアノ)のデュオ。音楽歴は共に6歳頃より始まり、それぞれのキャリアを経て故郷・養父市で2014年1月に結成。幅広い演奏曲目とクールな演奏スタイルが持ち味。

やびきあきこ(ヴォーカル)は、バークリー音楽大学(Berklee College Of Music米国ボストン) を卒業し、帰国後は主に東京で活動。2008年より出身地但馬に拠点を移し、Nandee(ナンディー)という愛称でライブ活動。米国プリンストン発、幼児教育プログラム「Music Together」の講師として「Nandee Music」(豊岡市)を立ち上げる。

スタンダード、バラード、ゴスペル、R&Bなど、クールでホットなジャズ演奏とNandeeこと やびきあきこさんの音楽談義を織り込みながら、リラックスした雰囲気で進行してまいります。

たくさんの方のご参加をお待ちしています。

日 時: 2019年12月20日(金) 19:00~22:00 (受付開始18:30)
場 所: ドーモ・キニャーナ(豊岡市日高町江原)
ゲスト: ASAYANAGI featuring AKIKO YABIKI
テーマ: 「Jazz Night in Tajima Connection」
参加費: 3,000円
※ 講演後、立食交流会があります。
※ 参加申込は、info@tajimaconnection.com までメールでお知らせ下さい。
※ 参加希望の方のみご連絡ください。
(先着40名様) (「満席」のお知らせはe-mail、HPでお知らせします)

#60(記録)「但馬に大学をつくる」平田オリザ氏

2019年11月15日
テーマ : 「但馬に大学をつくる」
ゲスト : 平田オリザ(劇作家・演出家)

但馬コネクションも今回で第60回を迎えました。これまでお呼びしたゲストは、但馬内外がほぼ半々。但馬コネクションこそが、「誰かが誰かを知っている」「新しい価値観で繋がり」「出入り自由な風通しの良く」「自分たちでつくり、自分たちで楽しむ、出会いと創造の場」である『新しい広場』(by平田オリザ)になっていると自負しています。
今回のゲストはそのオリザさん。3回目の登場です。今回は歓迎の意味も込めて「豊岡市民の」平田オリザさんと紹介させていただきましょう。

10月に専門職大学の申請が終わりました。これは但馬の3市2町が請願をしてできた県立の大学で、普通の4年制大学です。日本には、演劇をやっている国公立の大学がなく、演劇界の悲願でした。これが実現するなら豊岡に引っ越してきますよと言ってしまい、現在に至っています。県庁準備室には但馬・豊岡の出身者が配置され、スピーディに話が進みました。

豊岡は、「コウノトリでも生きられる」環境と経済のまちでしたが、次は「アーティストでも生きられるまち」が加わります。アーティストのような人間でも生きられる。だから安心してこのまちにきてください、というわけです。

KIACの成功
城崎国際アートセンターは、以前は城崎国際会議場という典型的なお荷物施設でしたが、これが市に払い下げられることになった頃、豊岡を訪れました。素晴らしい街並みが残る城崎と大会議場のギャップ。「まあ、がんばれば大丈夫なんじゃないでしょうか」と言ったところが「平田さんが大丈夫と言っている」と伝わってしまい、リニューアルに関わることになりました。

レジデンスに特化した国際アートセンターとして模様替えした結果、わずか20日だった年間稼働日が330日になりました。世界中の団体から申し込みが来ています。来年度は20数か国80団体から申し込みがあり、この中から15団体を選ぶことになっています。応募団体はほぼ口コミで集まっています。

演劇やダンスに特化したアーティストインレジデンスは世界を見渡してもありません。普通なら滞在費だけでも大きなお金が必要ですが、ここでは滞在費無料で制作に取り組むことが出来ます。そして、パフォーミングアーツは完成後世界中で上演され、城崎のクレジットが必ず入るので、口コミで広がっていくのです。アジアでは、KIACに選ばれたことで助成対象になる国も出てきました。

短期的な成果は問いません。城崎は、『城崎にて』だけで100年やってきたまちです。志賀直哉だけでなくいろんな文人墨客が各旅館に滞在し作品を残してきました。パフォーミングアーツのアーティストによって今度は城崎が世界に広がっていくと若旦那たちと話しました。

毎月のようにトップクラスのアーティストが滞在するので、子どもたちはそれを肌で触れることができる。まさに「この町で、世界と出会う」ことができています。

豊岡の教育政策
豊岡では、コミュニケーション教育の柱として、演劇教育を市内38の全小中学校で実施しています。
教育・子育て政策がきちんとしていないまちは、IJターンに選ばれません。これまで言われてきた「雇用」は十分条件ではなかったということです。工業団地誘致は、男性目線でしたが、女性は、子育て、教育、医療、そして広い意味での文化に惹かれて来ます。

豊岡市が主催して東京で演劇ワークショップを実施したところ、キャンセル待ちの人気でした。関心のある人がピンポイントで来てくれて、そこから口コミでどんどん広がります。演劇は、今、注目されている「非認知スキル(=学ぶ力)」を伸ばすのにも有効とわかっています。

親による子どもへの働きかけと子どもの学力の関係を調べた調査があります。家に本があったり、博物館や美術館に連れていく習慣があると、学力が伸びることがわかっています。英語や外国の文化にふれるように意識することも、世界や科学に関心を持たせることにつながるため、自分で学ぶ力が付き、成績が上がります。

こういったことは、放っておくと東京が圧倒的に有利になりますが、豊岡では公教育の中で保証していきます。

英語教育でも、すべての小学校にALTが配置されています。

ただし、豊岡の考える「グローバル教育」は、世界で戦える人材を育成するためのものではありません。豊岡を世界的に有名にするための教育なのです。東井義雄さんの「村を捨てる学力、村を育てる学力」という考え方がありますが、文科省の推進するグローバル教育は、国を捨てる学力です。村を育てる学力とは、「自らの共同体を守り、発展させることのできる学力」といえるでしょう。教育の質を変えていく必要があります。

豊岡だけでなく、但馬地域のほとんどの高校で演劇教育を導入する予定です。大学入試改革で、国公立の3割がAO入試になるので、コミュニケーション能力は必須です。共同で学べる力が必要となるのです。ほとんどの進学校はこれに追いついていず、但馬が先行しています。

国際観光芸術専門職大学
国際観光芸術専門職大学(仮称)は、定員80人、全学でも320人の日本で最も小さな公立大学です。演劇とダンスの実技が本格的に学べる日本初の公立大学ですが、「こんなところに先生が来てくれるのか?」と言われていました。ふたを開けてみると、何十倍の倍率で40名の教員団が決定しました。中でも、スウェーデン王立バレエ団でプリンシパルを務めた、ダンス界に知らない人はないダンサーの方が、夫婦で豊岡に移住してきます。

「観光」と名の付く大学も日本初ですが、観光と文化がバラバラなのは日本ぐらいなのです。

ウィーンのオペラ座では、毎日違うオペラを上演するように法律で定められています。ウィーンに数日滞在して毎晩違うオペラを観ます。昼は他の都市を観光し、夜にはオペラを観に帰ってきます。富裕層なので、経済効果が非常に大きく、税金で毎日違うオペラをやってもペイできるのです。ヨーロッパでは、どうやって滞在してもらうかに知恵を絞っています。昼と夜では、7~10倍経済効果が違うからです。

家族で旅行するので、家族で楽しめること、子どもと一緒に楽しめること、参加体験型のもの、ハイカルチャー・ハイスペックなものを意識しています。シンガポールも、実はカジノを作ったのは最後でした。シンガポールドルが高くなり買い物の魅力がなくなったときを見据えて、クラシック好きが何度でも来るまちにしていきました。
私は、観光について最も詳しい劇作家だと思います。以前受けた官僚からのレクチャーがいきています。

豊岡市の観光の課題と専門職大学
豊岡市の観光は、城崎がエンジンになっていますが、竹田城、出石、湯村、神鍋、氷ノ山などとの回遊性が欠如しています。また、一泊二食2万円の旅館モデルにも限界があります。海外からの富裕層の長期滞在を呼び込むには、国際観光都市への発展が必要です。それには、昼のスポーツ、夜のアートが必須条件となります。このような企画・運営のできる人材を育成しようというのが専門職大学です。

受験生だけで1000泊、オープンキャンパスで2000泊、入学式、卒業式、発表会で1000泊、学会誘致などで500泊の宿泊が見込まれます。観光業への経済効果大です。

大学は完全クオーター性で、講義・演習のほか、実習・集中講義・留学で学びます。観光やアートには集団生活が必要なので、1年次は全員学生寮に入居します。

豊岡市の子どもは、小学校二年生全員が演劇を観劇。小学校六年生で狂言を観劇します。おんぷの祭典でクラシック音楽に触れ、KIACでの無料観劇や、市民プラザでの演劇創作体験もあります。さらに大学も、ということになります。

日高河畔劇場と国際演劇祭
豊岡では、学習機能(鑑賞事業)を市民会館・永楽館、交流機能を豊岡市民プラザ、創造・発信機能はKIACというように、水平分業しています。豊岡市全体で機能分担する形です。人口が2番目に多い日高には何もありませんが、来年3月に日高河畔劇場ができます。

この劇場では、国際演劇祭を開催します。今年、第0回の演劇祭を実施しましたが、想定の1.5倍ほどの集客がありました。「観光地のポテンシャルをアートで引き出す」と教科書に書いてあるのですが、教科書通りうまく行きました。

アビニヨン演劇祭は1か月にわたって開催されますが、正式招待以外にフリンジといって自由参加できる枠があります。世界中からプロデューサーが集まり、すぐに商談が行われるという、見本市的な役割を果たしています。

日高では、神鍋高原などを利用し、アジア初の本格的なフリンジ型の国際演劇祭を開催します。開催には劇場と宿泊が必要ですが、幸い豊岡には、あらゆる階層が宿泊できる宿泊施設があります。このような環境は、アートフェスや演劇祭で一番活かせます。また、成功のためにはネットワークが必要ですが、KIACが既にネットワークを持っているので、それを活かして呼ぶことができます。

専門職大学の学生は、有償ボランティアとして参加します。ICTを利用した地域通貨の開発をKDDIと、拠点間の移動システムの開発をトヨタモビリティ基金と連携して進めます。演劇祭期間中なら相当思い切った実験が可能です。第0回から、JAL、トヨタ、KDDIがスポンサーとなってくれています。

やりたいのは、人間の顔をしたスマートシティの実現です。便利になれば幸せになるわけではない。便利になればなるほど人は不幸せになります。何のために便利にするのか、理念が必要です。ここでは、「アートを観に行くために便利にする」という理念で進めていきます。

5年でアジア最大、10年で有数の演劇祭にしていくことが目標です。豊岡には無理と言う人もありますが、アビニヨンは人口89,380人、豊岡は79,067人、カンヌが70,400人です。この規模でないとだめなのです。

尊敬する植村直己さんの故郷で人生最後の冒険に臨める光栄に震えています。そろそろ私を信じていただければと思います。