#55(記録)「91年生まれ、台湾人」 江欣樺 (京都大学大学院 農学研究科地域環境学科)

2019年4月19日
テーマ:「91年生まれ、台湾人」
ゲスト: 江 欣樺 (京都大学大学院 農学研究科地域環境学科 専攻)

江さんは現在、京都大学農学部大学院生。2014年に台湾大学の大学院学生として、コウノトリ野生復帰について学びに豊岡を訪問。その後もコウノトリ国際会議のプレゼンに来日するなど、豊岡とご縁の深い方です。今回のセッションでは、研究とは離れ、知っているようで知らない台湾について紹介していただきました。

魅力いっぱいの台湾!
台湾は九州ぐらいの面積の国です。大阪から飛行機で2時間ぐらい。去年は200万人の日本人観光客が訪れました。気候は亜熱帯から熱帯です。この狭い国土に3000m超の山が269座以上あり、富士山でも10位ぐらいになります。使用言語が多く、人口グループもバラバラです。台北地下鉄のアナウンスは4カ国語です。

台湾では、太らせることがおもてなし。「こんにちは」は、「ジャバーベイ!(ごはん食べた?)」。24時間365日もぐもぐしています。バラバラでごちゃごちゃなのが魅力。マイペースで自由で、カオスが日常。お寺も選挙も、イベントになってしまう国です。

400年の歴史にほぼ全部外国政権!
17世紀からの400年の歴史は、ほぼすべて外国の政権でした。17世紀、北部はスペイン、南部はオランダでした。その後、明朝遺民、清国、日本と続きます。日本の統治時代には農業生産が増大し、ダムも作られました。1931年には甲子園にも出場しています。1936年から戦時状態になり、皇民化政策が始まります。日本語による教育が行われ、今でも日本語ペラペラのお年寄り多いのはそのためです。1944年には米軍による無差別爆撃(台北大空襲)が行われました。1945年の終戦で、同盟国による代理接収が行われましたが、独立させるのかどうか未定の状態に置かれたままとなり、現在に至る問題となっています(台湾主権未定論)。1945年からは国民党(蒋介石)による統治が始まり、軍事独裁、白色テロ、独立・民主運動とその弾圧などが繰り広げられてきました。

91年生まれ、で?
私の家族を紹介します。

祖父母は日本統治時代に生まれ、平和な時代を過ごしました。国民党嫌いで、政治についてはあまり語りません。

父は、大中国意識を持たされて民主化を追求してきた世代です。民主化と経済成長を体験しました。

91年生まれの私は、台湾の民主社会に生まれ育ちました。91年は、戦争状態の特別制度が廃止された年で、完全に民主制に移行しました。小学生のころ、大統領選挙や初めての政権交代も経験し、政治を取り戻す希望と期待が非常に高い時代でした。2006年には、大統領の汚職事件が全国デモに発展するなど、希望が壊滅しました。また、2008年、中国との関係を深化する政権交代が行われ、中国に飲み込まれる不安が高まりました。メディアが独占され、中国のニュースがガンガン放送されるようになりました。

ひまわり運動 
中国とのサービス貿易協定の批准に向けた審議をきっかけに、若者が国会議事堂を占拠しました。内部は非常に組織的で、その様子はSNSで拡散されました。デモに約50万人が集結した結果、協定は撤廃され、2016年には選挙で国民党が大敗し、民進党への政権交代が起こりました。このことは若者の政治意識を喚起しました。

運動を通じて成長してきた台湾の若者たち。運動のさなかには誇らしげでした。運動は組織的に行われ、ゴミも落としませんでした。「私たちは乱暴な者でなく、自分の未来を手にしたい台湾人だけです」。アイドルグループTwiceの台湾人メンバーによる謝罪事件も若者の愛国心を喚起しました。

生まれつき独立意識が高いこの世代は、「イチゴ世代」「天然独世代」と呼ばれます。台湾は、中国の一部ではなく島そのものが独立した台湾国であると考えています。政治参加にも積極的で、「意識高い系」若者が多いです。

しかし、2014年からの数年はひまわり運動で盛り上がりましたが、2018年の統一地方選・全国住民投票では民進党がぼろ負けしました。国民党の韓國瑜による反エリート、ポピュリズムが蔓延。中国側が政治行動を強めているし、フェイクニュースの影響も大きいです。

そもそもイチゴ世代のような人は少数派で、上の世代からは「外が見れない意識高いエリート」と見られています。逆にイチゴ世代から見ると保守派は「思考能力のない愚かな大人」に見え、世代対立が深まっています。

私自身もそろそろ踏み出そうと思います。友人が国会議事堂にこもっているとき、自分は参加せずに外でサポートしていて、これでいいの?と自問していました。日常会話に政治を話し、家族を説得するところから。情報の正確性をチェックして伝えるなど、絶望する前になんとかできることをしていこうと思います。

政治は、生きることそのものです。経済と政治は実は同じもので、毎日の生活が政治なのです。政府に文句を言う自由を失いたくありません。失われるともう戻れないものなら、みんなで頑張って最後まで守ろうと思います。

#55(案内)江 欣樺 氏(京都大学大学院 農学研究科地域環境学科)「91年生まれ、台湾人」

2019年4月19日
テーマ「91年生まれ、台湾人」

「第55回 但馬コネクション」のご案内

4月は、江 欣樺 氏(現在、京都大学大学院 農学研究科地域環境学科 専攻)をお迎えし「91年生まれ、台湾人」というテーマでセッションを進めて参ります。

台湾・台北市出身の江欣樺(チャン・シンホア)さんは、国立台湾大学農学部にて、農林水産業や観光業における生産者と消費者、地域をマーケティングやマスコミなどで繋げる手法を専攻。さらに現在は、京都大学大学院にて農村地域と都市、地方と国家の関係を研究しています。

ご縁は、江さんが学生時代に海外実習で豊岡を訪問した時に始まる。目的は、台湾北部の茶産地、坪林(ピンリン)地区の再生復興活動のために、コウノトリ野生復帰と環境保全を学ぶこと。坪林は、絶滅危惧種のヤマムスメドリが生息し、その保護と茶農家の復活を目指している。その後、「第5回コウノトリ未来・国際かいぎ」(2014年)出演のため再び来訪。

私たちにとって、台湾は経済、観光でとても身近な存在です。まずは、台湾の歴史や文化、観光名所(地形、グルメなど)を紹介していただきます。次に、テーマにあるように、台湾の若者世代が何を考え、どのような未来を描いているのか、その台湾の最新事情を語っていただきます。

台湾をもっと知り、さらに関心を高め、人と人の友情・交流が活発になることを期待しています。グローバルな視点で、日本と台湾が共通に持つ地方の課題など、広く意見交換しませんか。

たくさんの方のご参加をお待ちしています。

日 時: 2019年4月19日(金) 19:00~22:00 (受付開始18:30)
場 所: ドーモ・キニャーナ(豊岡市日高町江原)
ゲスト: 江 欣樺 氏(京都大学大学院 農学研究科地域環境学科 専攻)
テーマ: 「91年生まれ、台湾人」
参加費: 3,000円
※ 講演後、立食交流会があります。
※ 参加申込は、info@tajimaconnection.com までメールでお知らせ下さい。
※ 参加希望の方のみご連絡ください。(不参加のご連絡は不要です)
(先着40名様) (「満席」のお知らせはe-mail、HPでお知らせします)