2019年3月15日
テーマ:「アイヌ文化に惹かれて」
ゲスト: 吹田バーバラ(甲南大学ドイツ語講師・アイヌ文化研究者)
ドイツ出身で神戸にお住いのバーバラさん。1年のうち3か月ほどは北海道でアイヌの人たちと過ごしておられるそうです。なぜそれほどアイヌに惹かれたのでしょうか。
6歳のときにいただいた花瓶に、小さい、着物を着た美人が描いてありました。見たことのない姿に心惹かれ、大切にしていました。アメリカインディアンの映画が流行ったときは、インディアンの衣装がかっこいいと思いました。デュッセルドルフ大学で建築を学びましたが、大学には日本人も多く、アメリカインディアンのような姿や髪の毛だなと思いました。その中の一人と恋に落ちて79年に日本を旅行し、奥深い文化と美しい自然に感動しました。そして結婚して38年になります。
子どもが親離れしたのを機に、ドイツ語を教えながら以前から興味のあった文化人類学を学ぶことにしました。1980年、テレビで偶然関野吉晴さんを見ました。関野さんは人類のたどった道を逆に、先住民族を訪ねながら10年かけて歩いた方です。武蔵野美大で教えている事を知り、学びに行きました。日本の縄文文化と北ヨーロッパの文化が似ていることに驚き、また、縄文とアイヌのつながりがあると新聞で知り、アイヌに興味を持つようになりました。
アイヌの衣装や工芸品を見ると、模様がヨーロッパのギリシャやケルトの模様に似ています。ヨーロッパではなくなってしまっていますが、日本のアイヌでまだ生き生きとしています。
アイヌには、カムイイオマンテというお祭りがあります。アイヌにとって、ヒグマは食べ物と毛皮を授けてくれる神(カムイ)です。その熊をイオマンテで神の国へ送り返す儀式です。実はゲルマン族も熊をとても大事にします。「生まれる」にあたる単語は「ベア(熊)」。ゲルマンとアイヌのつながりを感じます。「アイヌ」は「人間」という意味です。私は日本人にはなれませんが、人間(アイヌ)なんですね。
浦川太八さんのナイフ、マキリです。昔の材料で作ってあります。紐はシカのアキレス腱も使われています。
ドイツの女性は昔、小さなナイフを持ち歩いていました。アイヌのお母さんたちは針と糸。なんでも女性たちの手作りでした。女性たちは朝から晩まで働いていました。フクロウは女性の守り神と言われています。
≪そのほか、バーバラさんがこれまでに収集したさまざまな民芸品や衣装などを見せていただきました。≫
縄文時代の1万年間は戦争がありませんでした。災害があるので助け合わないと生きていけなかったのかもしれません。アイヌはそのころから日本列島に住んでいました。アイヌと沖縄の人はとてもよく似ていて、見分けがつきません。その後、弥生が進出してきましたが、沖縄、東北、北海道に濃い縄文の血が残っているようです。
北海道でも一番アイヌ文化が色濃いのは白老です。まだアイヌ語がたくさん話されています。
亡くなったときは、お墓に埋め、柱を立てます。お参りはしません。こういうところはハンガリーに似ています。
今のお年寄りは差別のひどい時代に生きてきたのでアイヌ語を話せない人が多いです。大学で学んだ若い人がアイヌ文化を継承しようとしています。先住民として国に認められ、近年法整備が進んできました。差別の話もたくさんありますが、今日はアイヌの良いところを紹介しようと思いましたので、その話はしません。今日のセッションが、アイヌに興味を持つきっかけになると嬉しいです。