#46(記録)「イノベーション(儲ける商売の仕組み)を考える」 西岡郁夫 氏(株式会社イノベーション研究所 代表取締役社長))

2018年3月16日
テーマ:「イノベーション(儲ける商売の仕組み)を考える」
ゲスト: 西岡郁夫 氏(株式会社イノベーション研究所 代表取締役社長)

 

豊岡市とのご縁も深く、出石永楽館で毎年行われる片岡愛之助さんの永楽館歌舞伎にも何度も足を運んでおられる西岡郁夫さん。イノベーションとは何か、またイノベーションを生み出せる組織の在り方についてお話いただきました。

===
永楽館で観る歌舞伎は、役者と観客の距離がとても近いですね。歌舞伎の原点はあんな感じだったのかと思わせます。これは豊岡が誇る文化だと思います。愛之助さんも意気に感じて相当なサービスをされています。

業務の決まり事を超えてちょっとしたサービスやコミュニケーションができる人とできない人がいます。これは、自分の仕事に誇りを持っている人と、ルールだけ守ればそれでよいと思っている人の違いです。ルールだけなら責任者は要りません。ルールを守ってさえいれば、責任を果たしさえすればそれでいいのでしょうか。「いや、違う」と思って勇気をもって、やる。こういった姿勢を日本人は取り戻す必要があると思います。

今日のテーマは「イノベーションを考える」です。イノベーションって何でしょう?「技術革新」というのは間違った訳です。イノベーションとは、新しい仕組みを利用し、その結果「儲ける」ことです。経営に大いに関係があります。

日本人の技術者は、「すごい技術の物を作ったのだから消費者は買うべきである」と思いがちです。これはイノベーションではなく単なる自己満足、思い上がりです。たとえば、インドでは鍵付きの冷蔵庫が大ヒットしました。これは、メイドさんが食材を持ち帰るという問題に対応したもので、「市場」を知っていたからこその発想です。日本では、台所に入ったことのない人がコンピュータの前で設計をしていますが、イノベーションを起こすためには市場や社会に入っていく必要があるのです。イノベーションとは、必ずしも技術革新である必要はなく、いわば「商売の転がし方」といってもいいでしょう。

Amazonは本屋のECとしては実は200社目。後発です。ECは在庫しなくてよいと言われていましたが、Amazonは巨大な倉庫に膨大な在庫を抱え、素早く発送します。利益は出さず、すべて物流につぎ込んできました。さらにはリアル店舗である生鮮食品のホールフーズを巨額で買収し、経営は前CEOにそのまま任せました。いったい何を狙っているのでしょう。

世界のファッション業界で独り勝ちしているZARA。ファッション業界では普通、企画から商品陳列まで9か月かかるところ、ZARAは2週間で実現します。いわばファッションの後出しじゃんけん。最新のパリコレの素材を落として大量生産。1シーズンだけ着ればよいという若者のニーズに合った品質に最適化したのです。繰り返しますが、イノベーションのカギは技術だけでなく、商売の転がし方です。

江戸時代の日本にも、戦略的、イノベーティブなビジネスモデルがありました。今の三越、越後屋です。創業者の三井八郎兵衛高利は53歳で起業したのですが、「店前現銀(金)掛け値なし」「仕立て売り」「端切れ売り」といった新しい販売手法を編み出し、ロゴ入りの傘を貸し出すなど、うまく商売を転がしました。

豊岡市でも、城崎温泉における外湯と温泉旅館の共存共栄、環境と経済の共鳴、城崎アートセンターなどはイノベーティブな試みです。

日本から世界に通用するイノベーションが起きないのは、井の中の蛙だからです。イノベーションを起こすのは、新参者と若者。混沌(ダイバーシティ)の中からイノベーションが生まれます。大切なのは新参者や若者が提案できる雰囲気。彼らに試行錯誤させるのが上司や幹部の度量です。「できないことをやろうと言うな」ではなく、困難なことでも提案できる雰囲気が必要です。

私が思う理想の上司は鬼平犯科帳の鬼平です。元盗人たちの罪を赦して配下にする指導力、ちょっとのことでアレっと感じる感性、すぐ動く行動力…。

リスクを恐れず初めてのことに挑戦する人は(最初に海に飛び込む)ファーストペンギンと呼ばれますが、続く人がいなければ無駄死にです。次に飛び込む部下(セカンドペンギン)がいるかどうか、次々に飛び込む組織になっているかどうかが重要です。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です